恋 一切を要す、 われは憧(あこが)るる霊(たましひ)なり。 物をしみな為(せ)そ、 若(も)し齎(もたら)す物の猶(なほ)ありとならば。—— 初めに取れる果実(このみ)は年経(としふ)れど紅(あか)し、 われこそ物を損ぜずして愛(め)づるすべを知るなれ。 対話 「常に杖(つゑ)に倚(よ)りて行(ゆ)く者は その杖(つゑ)を失ひし時、自(みづか)らをも失はん。 われは我にて行(ゆ)かばや」と、われ語る。 友は笑ひて、さて云(い)ひぬ、 「な偽(いつは)りそ、 つとばかり涙さしぐむ君ならずや、 恋人の名を耳にするにも。」 或女 古き物の猶(なほ)権威ある世なりければ 彼(かれ)は日本の女にて東の隅にありき。 また彼(かれ)は精錬せられざりしかば 猶(なほ)鉱(あらがね)のままなりき。 みづからを白金(プラチナ)の質(しつ)と知りながら……