道たま/\蓮月が庵のあとに出でぬ梅に相行く西の京の山 君が前に李青蓮説くこの子ならずよき墨なきを梅にかこつな 或手 打つ真似(まね)をすれば、 尾を立てて後(あと)しざる黒猫、 まんまろく、かはゆく…… けれど、わたしの手は 錫箔(すゞはく)のやうに薄く冷たく閃(ひら)めいた。 おお、厭(いや)な手よ。 通り雨 ちぎれちぎれの雲見れば、 風ある空もむしやくしやと むか腹(ばら)立てて泣きたいか。 さう云(い)ふ間(ま)にも、粒なみだ、 泣いて心が直るよに、 春の日の入(い)り、紅(べに)さした よい目元から降りかかる。 濡(ぬ)らせ、濡(ぬ)らせ、 我髪(わがかみ)濡(ぬ)らせ、通り雨。