砂の上
「働く
「こんなに働いてゐるよ、僕達は、」
威勢のいい声が
わたしは
薄暗い砂の上に寝そべつて、
五六人の男が
おなじやうなことを言つてゐる。
わたしもしよざいが無いので、
「まつたくですね」と声を掛けた。
すると、学生らしい
「君は感心な働き者だ、
女で居ながら、」
わたしはまだ働いたことも無いが、
「お仲間よ」と言ひ返した。
けれども、目を挙げると、
その人達の
まつ
大勢の人間が
みんな黙つて
一秒の
力いつぱい、せつせと、
大きな網を編んでゐる。
三十女の心
音も無い火の
一輪
わが愛欲
わが愛欲は限り無し、
香油をぞ塗る、更に塗る。
知るや、知らずや、恋人よ、
この楽しさを告げんとて
わが唇を君に寄す。
今夜の空
今夜の空は血を流し、
そして
海になびいた
月がよろよろ泳ぎゆく。