うたたねの君がかたへの旅づつみ恋の詩集の古きあたらしき
戸に倚りて
日中の夜
真昼のなかに
空を
氷のやうに冷えてゐる。
わたしの心を通るのは
人に
新たに
古い香りを立ててゐる。
初めて聞いた言葉にも
寂寥
ほんに
驚くことが無くなつた。
薄くらがりに青ざめて、
しよんぼり独り手を重ね、
恋の歌にも身が
自省
あはれ、やうやく
たそがれ時の近づくに。
あはれ、やうやくうら寒し。
山の動く日
山の動く日きたる、
かく
山はしばらく眠りしのみ、
その昔、彼等みな火に燃えて動きしを。
されど、そは信ぜずともよし、
人よ、ああ、
すべて眠りし女、
今ぞ
一人称
一人称にてのみ物書かばや、
我は
一人称にてのみ物書かばや、
我は、我は。