与謝野晶子詩歌集2
春が来た
春が来た。
せまい庭にも日があたり、
立つ
春が来た。
妻に
ふくら
春が来た。
遠い旅路の
わたしを泣かせに
春が来た。
朝の
青いうれしい春が来た。
二月の街
春よ春、
街に来てゐる春よ春、
横顔さへもなぜ見せぬ。
春よ春、
うす
二月の肌を
早く
あの
春よ春、
そなたの肌のぬくもりを
その手には
そして恋する赤い時。
春よ春、
おお、横顔をちらと見た。
緑の雪が散りかかる。