うなじ手にひくきささやき藤の朝をよしなやこの子行くは旅の君
まどひなくて経ずする我と見たまふか
髪をきれいに
十六七の美少年。
さくら色した
ようも似合うた
みどりの
青い
南の海の精であろ。
きやしやな前歯に麦の茎
ちよいと
つつみ
ほそいづぼんに、赤い靴、
そよろと
五行ばかりの新しい
恋の
女の
物を思へど、
夏の女王
おお、暑い夏、今年の夏、
ほんとうに夏らしい夏、
不足の言ひやうのない夏、
太陽のむき出しな
心臓の
万物が一斉に
うんと
肺
たらたらと汗を流し、
芽と共に花を、
花と共に香りを、
愛と共に歌を、
歌と共に踊りを、
内から投げ出さずにゐられない夏、
火の
機関銃で掃射する夏、
沸騰する
乱舞する
かう
万物は目を
救はれる、救はれる、
沈滞と怠慢とから、
安易と
小さな
サンチマンタルから、
無用の論議から……
おお、密雲の近づく中の
それが
見よ、今、