魔のわざを神のさだめと眼を閉ぢし友の片手の花あやぶみぬ
歌をかぞへその子この子にならふなのまだ
ひるまへ
てれ、れん、れんと鳴り出した。
つて、れん、れんと鳴り出した。
それは
昼まへに来るマンドリン
歌もうたやるマンドリン。
窓の
白いレエスの冷たさよ。
お城の壁に
蔦の葉のよな襟かざり。
上を見上げる襟かざり。
ちり、りん、りんと
上で立てたる走り泣き。
初めのお客は誰れであろ、
わたしも投げてやりませう。
今朝の夜明の四時過ぎに、
誰れかとしたる喧嘩から、
ずつと泣いてたお隣の、
向うもわたしをちよいと見た。
思はず髪を引き入れた、
白い四階の窓口へ、
(
湿つた
アカシヤの葉が散りかかる。
(つづく)
底本:「晶子詩篇全集」実業之日本社
1929(昭和4)年1月20日発行
「定本 與謝野晶子全集 第九巻 詩集一」講談社
1980(昭和55)年8月10日第1刷発行
「定本 與謝野晶子全集 第十巻 詩集二」講談社
1980(昭和55)年12月10日第1刷発行
「みだれ髪」名著複刻全集 近代文学館、日本近代文学館
1968(昭和43)年12月発行
※ このファイルは、青空文庫で作成されたものを編集し再構成しています。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」を、大振りにつくっています。
入力:武田秀男 田中哲郎
校正:kazuishi 富田倫生
構成:明かりの本
ファイル作成:
2004年6月24日作成
2012年3月23日修正
2018年12月17日構成
青空文庫作成ファイル:
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