ながしつる四つの笹舟(さゝぶね)紅梅を載せしがことにおくれて往きぬ 奥の室(ま)のうらめづらしき初声(うぶごゑ)に血の気のぼりし面(おも)まだ若き 五月の歌 ああ、五月(ごぐわつ)、 そなたは、美(うつ)くしい 季節の処女(をとめ) 太陽の花嫁。 そなたの為(た)めに、 野は躑躅(つゝじ)を、 水は杜若(かきつばた)を、 森は藤(ふぢ)を捧(さゝ)げる。 微風(そよかぜ)も、蜜蜂(みつばち)も、 はた杜鵑(ほとゝぎす)も、 唯(た)だそなたを 讃(ほ)めて歌ふ。 五月(ごぐわつ)よ、そなたの 桃色の微笑(ほゝゑみ)は 木蔭(こかげ)の薔薇(ばら)の 花の上にもある。