南風
四月の
気ちがひじみた風が吹く。
砂と、
気球のやうに逃げよとし、
髪や、
羽ばたくやうに舞ひ
人も、車も、牛、馬も
同じ
電車、自転車、監獄車、
自動車づれの
鼻息荒く
人を侮り、
浮足
逃げ惑はせて、あはや今、
踏みにじらんと追ひ迫り、
さて、その
からかふやうに、勝つたよに、
見返りもせず去つて
そして神田の四つ
下駄を切らして
わたしの顔を憎らしく
五月の海
おお、海が高まる、高まる。
若い、やさしい
音楽のやうに海が高まる。
さうして、その先に
美しい海の
まんまるい一点の
それを中心に
今、海は一段と緊張し、
高まる、高まる、高まる。
おお、若い命が高まる。
わたしと