かしこしといなみにいひて我とこそその山坂を御手に倚らざりし 鳥辺野は御親の御墓あるところ清水坂(きよみづざか)に歌はなかりき チユウリツプ 今年も五月(ごぐわつ)、チユウリツプ、 見る目まばゆくぱつと咲く、 猩猩緋(しやう/″\ひ)に咲く、黄金(きん)に咲く、 紅(べに)と白とをまぜて咲く、 人に構はず派手に咲く。 五月雨 今日(けふ)も冷たく降る雨は 白く尽きざる涙にて、 世界を掩(おほ)ふ梅雨空(つゆぞら)は 重たき繻子(しゆす)の喪(も)の掛布(かけふ)。 空は空とて悲しきか、 かなしみ多き我胸(わがむね)も 墨と銀との泣き交(かは)す ゆふべの色に変る頃。