与謝野晶子詩歌集

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かしこしといなみにいひて我とこそその山坂を御手に倚らざりし 
 
鳥辺野は御親の御墓あるところ清水坂きよみづざかに歌はなかりき 
 
 
 
 
 
 
 
  チユウリツプ 
 
今年も五月ごぐわつ、チユウリツプ、 
見る目まばゆくぱつと咲く、 
猩猩緋しやう/″\ひに咲く、黄金きんに咲く、 
べにと白とをまぜて咲く、 
人に構はず派手に咲く。 
 
 
 
 
 
 
 
  五月雨 
 
今日けふも冷たく降る雨は 
白く尽きざる涙にて、 
世界をおほ梅雨空つゆぞらは 
重たき繻子しゆす掛布かけふ。 
 
空は空とて悲しきか、 
かなしみ多き我胸わがむねも 
墨と銀との泣きかはす 
ゆふべの色に変る頃。