わが庭
おお咲いた、ダリヤの花が咲いた、
明るい
破れた障子をすつかりお
思ひがけない
黒ずんだ緑に、灰がかつた青、
陰気な
春と
永い冬から
それも遅れて七月に。
まあ、うれしい、
ダリヤよ、
わたしは思はず両手をおまへに差延べる。
この
しかし、もう、わたしの目には
ダリヤもない、指もない、
わたしの心の花の
夏の朝
どこかの屋根へ早くから
群れて
もう戸の
細い雨戸を
荒れた庭とも
しつとり青い露がおく。
日本の夏の朝らしい
このひと時の涼しさは、
人まで、身まで、骨までも
水晶質となるやうに、
しみじみ清く
栓をねぢれば、たた、たたと
思ひ余つた胸のよに、
バケツへ落ちて盛り上がる
わたしの立つた板敷へ
裏口の戸の
新聞くばりがばつさりと
投げこんで
薄暗がりにここちよや。