蝉
わたしの
その
いろんな
わたしの
最初の口火、
いま山の手の
どの庭、どの木、どの屋根も
七月の
枝にも、葉にも、
流れるやうな
光のなかで
無駄と知らずに、根気よく、
砂を
重い
鉄の鎖をゆする
悟りめかして、しゆ、しゆ、しゆ、しゆと
水晶の
思ひ出しては
泣きじやくりする恋の
さて
羽ばたきをする
新秋
サフイイルと、
真珠を盛つたギヤマンの
朝の日の昇るまま、
その中に歌ふトレモロ——秋の
明るき
麻の
上の
夏の休みを
休みのはてに
別るる
夏の尽くるや惜しからん、
都に住めるしあはせは
秋の立つにも身に知らる。
貧しけれども、わが
初秋の月
世界はいと静かに
涼しき
その差延べし手に光りぬ、
黒き
一つの波は
柔かき
その上を
波は次第に高まる、
麦の
さて長き
拡がり、拡がる、
しろがねの
波は
されど
常に高く
優しい秋
誇りかな春に比べて、
優しい、優しい秋。
目に見えない
秋は手にして、
風に吹かれる雲、
街の並木、
雑草の花にも、
一つ一つ似合はしい
まんべんなく、
みんなを
その
小鳥の
夕焼の空のやうな
これが秋です。
優しい、優しい秋。
コスモスの花
少し冷たく、
清く、はかなく、たよたよと、
コスモスの花、高く咲く。
秋の心を知る花か、
うすももいろに高く咲く。
秋声
ひろき葉一つ、はかなくも
影をば
あはれ傷つく鳥ならば
血に
秋に
秋
秋は
ちんからりんと
秋は妹の
きやしやな
明るい
さて、また、秋は
青みを帯びたお
園遊会の片隅のいたや
少し伏目に、まつ白な菊の花壇をじつと見る。
それから後ろのわたしと顔を見合せて、
「まあ、いい所で」と走り寄り、
「どうしてそんなにお
優しい、優しい秋だこと。