仏蘭西の海岸にて
さあ、あなた、
世界が今
おお、夏の
この
天使の見る夢よりも、
聖母の肌よりも。
海峡には、ほのぼのと
白い
そして
黒い暗礁の
首を
じつとまだ眠つてゐます。
彼等を驚かさないやうに、
素足で
まあ、
涼しい風だこと……
世界の初めにエデンの園で
若いイヴの髪を吹いたのも
ここにも常に若い
みづみづしい愛の世界があるのに、
なぜ、わたし達は自由に
裸のままで吹かれて
けれど、また、風に吹かれて、
帆のやうに
日本の
わたし達の歩みに合せて、
もう海が踊り始めました。
水晶と
浮き上がりつつ、沈みつつ、
沈みつつ、浮き上がりつつ……
そして、その拡がつた長い
わたし達の素足と
そしてまた、ざぶるうん、ざぶるうんと
あら、
日が昇るのですね、
霧の中から。