フオンテンブロウの森 秋の歌はそよろと響く 白楊(はくやう)と毛欅(ぶな)の森の奥に。 かの歌を聞きつつ、我等は しづかに語らめ、しづかに。 褪(さ)めたる朱(しゆ)か、 剥(は)がれたる黄金(きん)か、 風無くて木(こ)の葉は散りぬ、 な払ひそ、よしや、衣(きぬ)にとまるとも。 それもまた木(こ)の葉の如(ごと)く、 かろやかに一つ白き蝶(てふ) 舞ひて降(くだ)れば、尖(とが)りたる 赤むらさきの草ぞゆするる。 眠れ、眠れ、疲れたる 春夏(はるなつ)の踊子(をどりこ)よ、蝶(てふ)よ。 かぼそき路(みち)を行(ゆ)きつつ、猶(なほ)我等は しづかに語らめ、しづかに。 おお、此処(ここ)に、岩に隠れて ころころと鳴る泉あり、 水の歌ふは我等が為(た)めならん、 君よ、今は語りたまふな。