与謝野晶子詩歌集

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  フオンテンブロウの森 
 
秋の歌はそよろと響く 
白楊はくやう毛欅ぶなの森の奥に。 
かの歌を聞きつつ、我等は 
しづかに語らめ、しづかに。 
 
めたるしゆか、 
がれたる黄金きんか、 
風無くての葉は散りぬ、 
な払ひそ、よしや、きぬにとまるとも。 
 
それもまたの葉のごとく、 
かろやかに一つ白きてふ 
舞ひてくだれば、とがりたる 
赤むらさきの草ぞゆするる。 
 
眠れ、眠れ、疲れたる 
春夏はるなつ踊子をどりこよ、てふよ。 
かぼそきみちきつつ、なほ我等は 
しづかに語らめ、しづかに。 
 
おお、此処ここに、岩に隠れて 
ころころと鳴る泉あり、 
水の歌ふは我等がめならん、 
君よ、今は語りたまふな。