驟雨
ブロオニユの森のあたりへ。
今、かなたに、
霧の奥に、
光の
裸となりて雨を浴ぶる
夏の
アカシヤとブラタアヌは
汗と
その喜びに手を振り、
カツフエのテラスに花咲く
そぞろがはしく
ワルツを舞はんとするもあり。
枝より、屋根より、
はらはらと降らせぬ、
水晶の粒を、
銀の粒を、真珠の粒を。
それを見送るは
祭の列の
わがある
わが住む三階の窓より見ゆる
近き
巴里の一夜
テアトル・フランセエズの二階目の、
君と並べば、いそいそと
もう
第一列のバルコンに、
肌の
白い
銀を散らした
胸に
しろいづくめの
マネが
みな
また三階の右側に、
うす桃色のコルサアジユ、
ほそい首筋、きやしやな腕、
少し伏目に物を読み、
あら
厚いくちびる、白い目の
アラビヤらしい
襟も
きらきら光る、おなじよな
黒い女を
どしん、どしんと三度程
舞台を
しづかに
よごれた
血に
コツペが書いた詩の中の
人を殺した
法官達の居ならんだ
前に引かれる痛ましさ、
足の運びもよろよろと……
おお、ムネ・シユリイ、見るからに
老優の芸の偉大さよ。