和蘭陀の秋
秋の日が——
旅人の身につまされやすい
秋の日が
薄むらさきに
高い
今、太陽が
しつとりと
反対な
港の船の帆ばしらが
どれも
そのなかに港の波が
幻惑の
ぎらぎらとモネの絵のやうに光る。
よく見ると、その波の
無数の帆ばしらの
細長い
あなた、窓へ来て御覧なさい、
手紙を書くのは
まあ、この
わたし達は、まだ幸ひに若くて、
かうして、アムステルダムのホテルの
五階の窓に顔を並べて、
この
と
あれ、
一隊の男の
小学の制服なんでせう。
ああ、東京の子供達は
どうしてゐるでせう。
同じ時
黒く大いなる起重機
我が五階の前に立ち
その下に
沖に掛かれる汽船の
税関の
桟橋に寄る
いづこの酒場の窓よりぞ、
ギタルに合はする
秋の
波止場に沿ふ散歩道は
海の反射淡く残りぬ。
うら寒し、はるばる
アムステルダムの
きしう
知らざりしかな、
わが
あまりに君にかかはりて。
君の
あはれ
君が心は
わが
わが聞く
わが見る
わが
ああ、わが心
東の空にとどめこし