冷たい夕飯
(雑詩卅四章)
我手の花
みづからの
さはれ、盛りの
うすくれなゐを
淡き
いと
わが
一すぢ残る赤い路
四月五月に知り
わたしは絶えず
森の
曲つて昇る赤い
わたしは
恋の吐息の
広い青葉の
若い男のさし伸べる
優しい腕の線を見た。
わたしは
胸の拍子に合ふを知り、
花のしづくを美しい
甘い
今はあらはな冬である。
霜と、
わたしは
砂の塔
「砂を
砂の塔をば建てる人
惜しくはないか、
さては
しかも両手で
指のひまから砂が
する、する、すると砂が
寄せて、
砂から出来た砂の塔
砂の塔をば建てる人
これに答へて
「時が惜しくて砂を積む、
命が惜しくて砂を積む。」
古巣より
空の
山を傾け、野を砕き、
地に住むわれに
野の花の
われは
やがて跡なく消えはてん。
枝より枝に遊びつつ、
花より花に歌ふなり。
すべての物よ、呼ぶ
われは変らぬ
乏しき声にくり返し
初恋の巣にとどまりぬ。