しら菊を折りてゑまひし朝すがた垣間みしつと人の書きこし
八つ口をむらさき緒もて我れとめじひかばあたへむ三尺の袖
人の言葉
ものかずならで隅にある
わが歌のため、
いざ知りたまへ、わが歌は
泣くに代へたるうす笑ひ、
灰に
死に隣りたる
また知りたまへ、この
春と夏とに
秋の光を早く吸ひ、
月のごとくに青ざめぬ。
闇に釣る船
(安成二郎氏の歌集「貧乏と恋と」の序詩)
わたしは
空には
細い
小さな船の
光る、光る、
けれど、
どの
わたしの釣らうとするのは
こんなんぢやない、決して。
わたしは知つてゐる、わたしの船が
だんだんと沖へ流れてゆくことを、
そして海がだんだんと
深く
そして、わたしの
不思議な命の
どうやら、わたしの糸のとどかない
底の底を泳いでゐる。
わたしは
是非とも
もう糸では
わたしは身を
あれ、見知らぬ船が通る……
わたしは
もしや、あの船が
底の人魚を釣つたのぢやないか。