春かぜに桜花ちる
憎からぬねたみもつ子とききし子の垣の山吹歌うて過ぎぬ
真珠貝
真珠の貝は常に泣く。
人こそ知らね、
風吹かぬ日も
まして、たまたま目に見えぬ
小さき砂の貝に
避くる
貝は
忍びて泣けど、
涙は身よりにじみ
貝に
小さき砂をうるほせば、
清く切なきその涙
はかなき砂を
日ごとに
貝は
東に昇る「あけぼの」は
その
ともに空より投げかけて、
砂は真珠となりゆけど、
それとも知らず、貝の身は
浪のうねり
島の沖なる
とろりとしたる海の色、
ゆるいうねりが
大きな
釣船一つ、まろまろと
また傾きて低くなり、
空と水とに浮き遊ぶ。
君と住む身も
ひろびろとした愛なれば、
悲しきことも