星の子のあまりによわし袂あげて魔にも鬼にも
百合の花わざと魔の手に折らせおきて拾ひてだかむ神のこころか
宿屋
八番の
行き給へ、われに用なき
君なりと、いとあらゝかに
云ふめるは、この朝日屋の
中二階赤ら顔なる
宿ぬしの住ふ部屋より
もるゝ声、腹立ちの声。
小田原の
宿の妻、夕方ときし
洗ひ髪しづくのたるを
いとへれば椽にたゝずみ
大嶋の灯など見るらし。
水いろの絽の
いまだなほ
もの云はず蚊うつ団扇の
はた/\と音するばかり。
若い
唄の声何を云ひしか
この女闇にほゝ笑む。