しろ百合はそれその人の高きおもひおもわは
さはいへどそのひと時よまばゆかりき夏の野しめし白百合の花
産の床
音も無く物ぞ来れる。
静かなる胸を叩きて
傍らに寄り添ふけはひ。
見開きて見る目に映る
影ならず、黄色の衣
まばゆくも匂へるを着て
物は今足のまはりを
見じとして心ふたげば
物は消ゆ。嬉しと思ひ
目ひらけば又この度は
緋のころも袖うち振て
魔ぞ立てる。黄色の物と
緋の物とこもごも見えつ。
且つ見れば
黄色にて、こなたの袖は
赤なりき。物がうち振る
袖の
その如き真白き影の
ふと見えぬ。黄色の袖と
緋の袖とやがて消し時
残りしはしら鳥の雛。
わが悩み早も残らず、
子よ、
うら若き母のまぼろし。