春にがき
ふた月を歌にただある三
夜の色
うれしきものは、春の宵、
人と
銀座通を行くこころ。
それにも増して嬉しきは、
夜更けて帰る濠ばたの
柳の靄の
一九一八年よ
暗い、血なまぐさい世界に
まばゆい、聖い夜明が近づく。
おお、そなたである、
一千九百十八年よ、
わたしが全身を投げ掛けながら
ある限りの熱情と期待を捧げて
この諸手をさし伸べるのは。
そなたは、——絶大の救世主よ——
世界の方向を
幾十万年目に
今はじめて一転させ、
人を野獣から救ひ出して、
我等が直立して歩む
今やうやく覚らしめる。
そなたの
太陽よりも、春よりも、
花よりも、——おお人道主義の年よ——
狂暴な現在の戦争を
世界の悪の最後とするものは
必定、そなたである。
わたしは三たび
そなたに礼拝を捧げる。
人間の善の歴史は
そなたの手から書かれるであらう、
なぜなら、——ああ恵まれたる年よ、——
過去の路は暗く塞がり、
唯だ、そなたの前のみ輝いて居る。