春をおなじ
みなぞこにけぶる黒髪ぬしや誰れ緋鯉のせなに梅の花ちる
〔無題〕
三輪の薔薇、わが手より
移さんとして
またと得難き宝玉の
身をば離るる心地して。
瓶に移せる薔薇の花、
さて今は是れ、一
私に見る花ならず、
我背子も愛で、友も愛で、
美くしきかな、安きかな、
見る人々の為に咲く。
〔無題〕
衰へて、濡れたる紙の如く、
瓶の端に
されど、しばし我は棄てじ。
花は仄かに猶
あはれ、こは、
香る、美くしき言葉も
〔無題〕
わが運命の贈りもの、
恋と歌とに足る身には
薔薇を並べた日が続く、
真珠を並べた日が続く。
かよわき身には、有り余る、
思ひやりなき運命よ
多くの
風が
裸に帰る日は来ぬか。