淵の水になげし聖書を又もひろひ
聖書だく子人の
〔無題〕
今夜
シヤン・ゼリゼエの植込も、
セエヌの水もしつとりと
青い狭霧に街灯の
涙を垂れて泣いて居る。
〔無題〕
群をはなれてヴェランダに
君ただひとり立つなかれ、
今宵は空の月さへも
人の踊を覗けるに。
いざ君、
ワルツの曲を聞きながら、
香料の香と、さかづきと、
女の燃ゆるまなざしと、
きやしやに
軽き笑まひと、足取と、
さらに渦巻く愛と美と。