与謝野晶子詩歌集

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裾たるる紫ひくき根なし雲牡丹が夢の真昼まひるしづけき 
 
紫のわが世の恋のあさぼらけ諸手もろでのかをり追風おひかぜながき 
 
 
 
 
 
 
 
  元日の歌 
 
元日のこころは若し、 
清々し、美くし、優し。 
人すべて一つになりて、 
微笑みて諸手もろでを繋ぐ。 
 
商人あきびとも我等を責めず、 
貧しきも富を憎まず、 
盗人も盗みを忘れ、 
囚人つみびとも今日は休らふ。 
 
溢るるは感謝のおもひ、 
太陽も讃めて拝まん。 
みしめ縄、かど松竹まつたけ、 
見る物に春の色あり。 
 
霞みたる都のかたに 
午砲どんのおと微かに響き、 
打仰ぐ青き空には 
紙鳶いかのぼり近く歌へる。