与謝野晶子詩歌集

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たまはりしうす紫の名なし草うすきゆかりを歎きつつ死なむ 
 
うき身朝をはなれがたなの細柱ほそばしらたまはる梅の歌ことたらぬ 
 
 
 
 
 
 
 
  〔無題〕 
 
たけ高きこと一丈、 
雪白せつぱくの翼を拡げたる大鳥二つ、 
鸞ならん、鳳ならん、 
青き空より舞ひくだり、 
そのくはへたる紫の花を 
幾たびも我手に置きぬ。 
昨夜の夢は是れなり、 
かかる夢は好し、 
覚めたる後も猶 
燦爛として心光る。 
 
 
 
 
 
 
 
  〔無題〕 
 
今日わしれども、わしれども、 
武蔵の路の長くして、 
われの車の窓に入る、 
盛り上がりたる白き富士。 
 
竜胆りんだういろに、冬の空、 
晴れわたりつつ、雲飛ばず。 
見て行く萩の上にあり、 
河原より吹く風のおと。