後編
(場所全く一変す。並びたる数箇の岩室に
闇の女
わたしがはっきり目で見た事を、夢にでも見たか、
それもわたしには分からぬ。どれ起して遣ろう。
小娘共びっくりするだろう。信ずることの出来る奇蹟の解決を、
やっとの事で見ようと思って、
さあ、出ろ、出ろ。髪をゆすって、
目をはっきりさせろ。
合唱の群
さあ、お
どんな不思議があったか言ってお聞せ。
聞いても本当に出来ないような事を聞くのが一番
闇の女
寐て起きて目をこすりこすり、もう退屈がるのか。
そんなら聴け。この洞、この岩屋、この庵には、田舎に隠れた
恋中の二人のように、殿様と奥様とが
かくまわれていなさるのだ。
合唱の群
あの、この中に。
闇の女
世間の
お傍で大事にしては下さったのだが、ああした中の腹心に似合わしく、
わたしははずしているようにした。あちこち歩いて、
薬の功能を知っているから、木の皮や根の苔などを
採って来る。その留守は
合唱の群
お前さんの話を聞くと、あそこの中に森や野原や川や湖水があって、
別な世界でも出来ているようだわ。飛んだ
闇の女
お前方は分からないから、言って聞せるが、あそこはまだ窮めたことのない深い所さ。
奥には座敷が座敷に続き、庭が庭に続いている。それをある時、物を案じながら見て廻った。
すると出し抜けに笑声がして、
ふいとそっちを見ると、男の子が一人奥様の膝から殿様の膝へ飛び附いている。
それからまた逆に殿様から奥様へ飛び附く。甘やかす、ふざけさせる、たわいなく
可哀がって
ぼうっとした。羽のないジェニウスのような裸の子さ。ファウヌスに似ていて、
獣らしくはない。それが堅い
虚空に高く飛び上がらせる。二度三度と
弾き返しているうちに、その子の頭が高い円天井に
障るじゃないか。心配げに奥様がそう云うのさ。
「飛び上がるなら、何遍でも、勝手にお飛び上がり。
だが、飛んで逃げるのじゃないよ。空を飛んで歩くことは
殿様も傍から意見している。「お前をそんなに飛び上がらせる、その弾く力は
地に生れた神アンテウスのように、お前の足の親指の尖が地に障ると、
すぐにお前に力が附くのだ」と云っているのさ。
そんな風で、
並んでいる上を、こっちの岩角からあっちの岩角へと、あちこち飛び廻る。
そのうち出し抜けに荒々しい谷の穴へ落ちて見えなくなった。
もう駄目らしかったのさ。奥様は泣き出す。殿様は機嫌を取る。
わたしは気にしながら、肩をゆすぶっていたのさ。ところがその子がまたどんな様子をして
出ただろう。その谷に宝でも埋まっているのか。
花模様の縞のある衣裳を立派に著て出て来た。
手には
元気好く、谷の上に覗いている岩の角へ出ている。こっちは皆あっけに取られる。
奥様と殿様とは、嬉しさの
無理はない。その子の頭の上の光りようと云ったらない。
そんな風で、まだ子供だのに、永遠な旋律が体の
節々を
製作者だと云うことを、もう知らせて、その振を見せて立ち振舞っている。
今にお前方その様子を見たり聞いたりして、何もかも感心してしまうだろう。
合唱の群
クレタ生れの
それをあなた奇蹟だと云うの。
あなたこれまで
聞いたことがないのでしょう。
イオニアやヘルラスに、
ずっと昔の先祖の代からある、
神や英雄の沢山の話を
聞いたことがないのでしょう。
今頃出来る事は
なんでも皆
美しかった先祖の代の
悲しい名残ですわ。
あのマヤの子の事を歌った、
真実よりも信じたい、
可哀らしいに比べると、
あなたの話はなんでもないわ。
その子は可哀らしくて丈夫でも、
やっと生れたばかりの赤さんなの。
それを蔭言の
智慧のない
綺麗な、軟かい毛織の
結構な
ところが、その横著赤さんが、
大事に押さえ附けていた、
紫の
まだどんな形にもなるような、
しかも弾力のある手足を、
もう横著に、可哀らしく、しっかりと
抜き出しましたの。丁度あの育ち上がった蝶々が、
窮屈な
脱け出して、遊半分、大胆に
日の一ぱいにさしている、
飛び廻るようでしたの。
そんな風に、この横著赤さんは
ひどくすばやくて、盗坊や詐偽師や、
その外あらゆる慾張る人間に、
いつまでも
赤さんは
ひどくすばやい手際で見せ附けましたの。
海の
旨く鞘から抜き取ります。
日の神のフォイボス様の弓矢も、
燃える火の神のヘファイストス様のやっとこも取る。
あの火に遠慮しなかったら、お父う様チェウスの
稲妻さえ取り兼ねなかったのです。
でもとうとう恋の神のエロス様とは角力を取って、
小股をすくって勝ちました。それから
キプリアの女神様がお可哀がりになると、
その隙にお胸の帯を取りました。
浄き旋律の、愛らしき
闇の女
あの可哀らしい声をお
昔話なんぞはさっさと忘れておしまい。
そんな古い神様の連中は
打ち遣ってお
誰ももうそんな事が分かってくれるものはないのだ。
我々はもっと高い税金を払わせられているのだ。
人の胸に
出て来なくてはならぬと云うのが、その税金だ。
(岩の方へ退く。)
合唱の群
こわいおばさん。お前さんもこの媚びるような
物の
今病気が直ったようで、なんだか
そして涙脆くなって来ましたわ。
心の中が夜が明けたようになって、
世界中にない事を、わたし達が
自分の胸の中で見附けるのだから、
日の光なぞは消えさせて下さい。
ヘレネ。ファウスト。上に記しし衣裳を著けたるエウフォリオン。並に登場。
童子エウフォリオン
わたしの歌う子供の歌をお
それがすぐにあなた方のお
わたしが調子に乗って
あなた方のお胸も
ヘレネ
人間らしく
愛は上品な二人を近寄らせるのですが、
神のような
結構な三人組を拵えますのね。
ファウスト
一切解決がこれで附いたのだ。
己はお前の物で、お前は己の物だ。
こうして縁が繋がれている。
これより外に、どうもなりようはない。
合唱の群
年来思い合っておいでになったお心が、
この坊っちゃんの柔かい
御夫婦の上に集っています。このお三人の
一組をお見上げ申すと、
童子
さあ、わたしを飛ばせて下さい。
さあ、わたしを
どんな高い所の空気の中へも
わたしの
もうその望に掴まえられています。
ファウスト
おっこちるとか、怪我をするとか
云うような事に出合って、
大事な息子が己達を
台なしにしないように、
余り思い切った事をしないでくれ。
童子
もうこれより長く
わたしの手や、
わたしの髪や、
わたしの著物を放して下さい。
皆わたしの物じゃありませんか。
ヘレネ
自分が誰の物だか、
考えておくれ、考えておくれ。
やっと美しく揃った
わたしの物、お前の物、あの人の物を
お前がこわしたら、わたし共がどんなにか
歎くだろうと云うことを、考えておくれ。
合唱の群
なんだか、このお三人の組はもう程なく
ちりぢりにおなりなさりそうですね。
ヘレネとファウストと
どうぞ
余り活溌過ぎる、
劇しい望を
控えてくれ、控えてくれ。
そして静かにおとなしく
この土地を飾っていてくれ。
童子
そんならあなた方の思召ですから
我慢していましょうね。
(合唱の群を
この機嫌の好い人達の
廻って
ヘレネ
ああ、それは
その美しい
面白い踊をさせてお
ファウスト
もうこんな事は早く済ませてくれれば好い。
こんな目くらがしのような事は
どうも己には面白くない。
(エウフォリオンと合唱の群と、歌ひ舞ひつゝ、種々の形に入り組みて働く。)
合唱の群
そんなにして両手を
お
その波を打った髪をゆすって
お光らせなさいますと、
その足でそんなに軽く地を踏んで
お
そして折々手足を
お入れ違わせなさいますと、
可哀らしい坊っちゃん、
それで思召はもう
わたくし達は皆
あなたをお
(間。)
童子
お前達は皆足の軽い
鹿どもだね。
さあ、もっと
新しい
わたしが猟人だよ。
お前達は
合唱の群
わたくし達を掴まえようと思召すなら、
余り早くお
可哀らしい坊っちゃん。
どうせわたくし共は皆
しまいにはあなたに抱き附きたいと
思っているのでございますから。
童子
森の中へ往こう。
木や石のある所へ往こう。
気が向かない。
無理に手に入れたものが
ひどく嬉しいのだ。
ヘレネとファウストと
なんと云う気軽な事だろう。なんと云う
騒ぎようだろう。
まるで角の笛でも吹くように、
谷にも森にも響き渡っている。
なんと云うふざけようだろう。叫びようだろう。
合唱の群
(一人々々急ぎ登場。)
わたくし達を馬鹿にして、恥を掻かせて、
前を通り抜けておしまいなすったのね。
みんなの中で一番気の荒いのを
お掴まえなすったのね。
童子
(一少女を抱き登場。)
この強情な小さい奴を連れて行って、
無理にでも遊ぶ
己の
厭がる口にキスをして、
力と意地とを見せたいのだ。
娘
お放しよ。こんな体の肌の下にも、
わたしの意地だって、あなたのと同じ事で、
そうわけもなく挫かれはしません。
あなたわたしが
そのお腕を大層たよりになさることね。
しっかり掴まえていらっしゃい。わたし笑談に
お馬鹿さんに
(火になりて燃えつゝ天に升る。)
わたしに附いて高い
わたしに附いて窮屈な墓へお
消えてしまった
童子
(身辺に残れる火を払ふ。)
ここは森の木立の間に
岩が
こんな狭い所が己になんになろう。
己は若くて元気じゃないか。
風がざわざわ鳴っている。
波がどうどう響いている。
どちらも遠く聞えている。
あれが近い所なら
(岩を踏みて、次第に高き所へ跳り登る。)
ヘレネ、ファウスト及合唱の群
シャンミイの獣の真似でもするのか。
おっこちはしないかと思って、ぞっとする。
童子
次第に高い所へ登らなくては。
次第に遠い所を見なくては。
これで自分のいる所が分かった。
これは島の真ん中だ。
ペロップスの国の真ん中だ。
合唱の群
この山と森との中におとなしく
暮そうとはお
今に道端や岡の上にある
葡萄の実だの、無花果だの、
採って上げます。
ねえ、こんな結構な国に
結構にしていらっしゃいましな。
童子
お前方は平和の夢を見ているのか。
夢を見ていたい人は見ているが
戦争。これが合図の
戦勝。これが続いて響く
合唱の群
誰でも平和の世にいて、
昔の戦争の日に戻りたがる人は、
暇乞するのですわ。
童子
危険の中から危険の中へ、
自由に、どこまでも大胆に、
自分の血を
この国が生み附けた人々だ。
この抑えることの出来ない人々には、
高尚な志が授けてある。
闘う人々には
総て福利が与えてある。
合唱の群
なすってよ。それでも小さくはお見えなさらない。
武装しておいでなさるような、軍にお
鉄や
童子
掩堡もなければ、
一人々々自信の力で遣って行く。
物にこたえる堅塁は
金鉄のような男児の胸だ。
人に侵されずに生きていようと思うなら、
早く軽装して戦場に出ろ。
女は娘子軍になるが
小さい子までが皆勇士になるが
合唱の群
あれは神聖な詩だわ。
あれは一番美しい星だわ。
次第に遠く遠く光って行くが
どうしたってその声がわたくし達の所へ
届かないことはない。どうしたって聞えてよ。
聞くのが
童子
なに。己は子供になって出て来はしない。
武装してこの青年は来たのだ。
強い、自由な、大胆な人達に交って、
胸ではもう手柄をしている。
さあ、行こう。
ああ、あそこに
名誉の
ヘレネとファウストと
まだこの世に、やっと生れて来たばかりで、
晴やかな幾日かに、やっと出合ったばかりで、
お前は憂の多い境へあこがれて行くか。
己達の事を
なんとも思わぬか。
この可哀らしい家庭が夢であったか。
童子
あなた方あの海の上の
そこの谷々に
塵の中に、波の上に、兵と兵とが出会って、
迫り合って苦戦するのです。
そして死は
掟です。
それはそうしたものなのです。
ヘレネ、ファウスト及合唱の群
恐ろしい事。気味の悪い事。
お前には死が掟かい。
童子
わたしに遠くから見ていられましょうか。
いやいや。往って艱難辛苦を倶にします。
上の人々
死ぬるが
童子
でも行かなくては。
もうわたしの羽が広がります。
あちらへです。行かなくては。行かなくては。
飛びますから、悪く思わないで下さい。
(エウフォリオン空に飛び騰る。刹那の間衣裳の身を空中に支ふるを見る。頭よりは光を放てり。背後には光の尾を曳けり。)
合唱の群
イカルスですね。イカルスですね。
まあ、おいたわしい事。
(美少年ありて、両親の脚の下に墜つ。この屍はその人の姿かと疑はる。されどその形骸は直ちに消え失せ、
ヘレネとファウストと
ああ、喜の跡から
すぐに恐ろしい憂が来た。
童子の声(地底より。)
お母あ様、この暗い国に
わたしを一人で置かないで下さい。
(間。)
合唱の群
(輓歌。)
なんの一人で置きましょう。どこにおいでなさいましょうと、
あなたは知った方のはずです。
あなたはこの世をお
誰の胸もあなたをお
あなたをお悔み申すことも出来ない位です。
御運命を羨ましがって歌うのですから。
美しくまた大きゅうございました。
立派なお家柄で、大した御器量で、
この世の福を受けにお生れになったのに、
惜しい事には、早くそれをお亡くしなすって、
お若い盛りにお隠れになりました。
世間を観察する、鋭い御眼力があって、
あらゆる人心の発動に御同情なすって、
優れた女の限に思われておいでになって、
特色のある詩をお
しかしあなたは断えず検束のない網の中へ
お駆け込みなすって、
民俗や国法に
無謀にも御牴触なさいました。
それでもおしまいには
清浄な勇気に重きを置かせて、あなたは
立派な物を得ようとなさいました。
だがそれは御成功になりませんでした。
誰が成功するでしょう。これは不幸の
運命がその中に跡をくらます
悲しい問題でございます。
だがいつまでも
及びません。新しい歌に蘇ります。なぜと云うに、
土地はこれまでそう云う歌を産んだように、
これから後もそれを産みましょうから。
(全き休憩。音楽息む。)
ヘレネ(ファウストに。)
美と福とが長く一しょになってはいないと云う
古い諺を、残念ながらこの身に思い合せます。
命の緒も愛の
痛ましゅう思いながら、つらいお
お
さあ、地獄の
(ヘレネがファウストに抱き附く時、その形骸は消え失せ、衣裳と面紗とファウストの手に留まる。)
闇の女(ファウストに。)
その一切の物の中から残った物を、しっかり持っておいでなさい。
その衣裳を手から放してはいけませむ。
もう悪鬼共が褄を引っ張って、
地獄へ持って行こうとしています。
しっかり持っておいでなさい。お亡くなしなさった
値踏の出来ぬ程尊い恵を忘れずに、
向上の道にお
いずれまた遠い、
(ヘレネの衣裳散じて雲となり、ファウストを包擁して空に騰らしめ、ファウストは雲に駕して過ぎ去る。)
闇の女
(エウフォリオンの衣と外套とリラの琴とを地上より拾ひ上げ、舞台の前端へ出で、遺物を捧げ持ちて語る。)
これでも旨く取り留めたと云うものです。
無論は消えてしまいました。
しかし何も世間のために惜むには当りません。
これが残っていれば、詩人に免許を遣り、
商売忌敵の党派を立てさせるには十分です。
わたしは技倆を授けて遣ることは出来ませんが、
せめて衣裳でも貸して遣ることにしましょう。
(舞台の前端にて、一木の柱の下に坐す。)
先導の女
さあ、皆さん早くおし。魔法は破れました。
古いテッサリアの婆あさんの怪しい、心の
耳よりも心を迷わする、籠み入った音の、
演奏の酔も醒めました。さあ、地獄へ
お后様はしとやかなお
急いでお
お
玉座の側でお目に掛かられることでしょう。
合唱の群
お后様はどこにだって喜んでおいででしょう。
地獄でもペルセフォネイア様とお心安くなすって、
外のお后様同士御一しょに、
息張って
わたし共はそれとは違って、低いアスフォデロスの野の奥に、
実のならない柳や、ひょろひょろした
白楊の木のお仲間にせられていて、
何を
面白くもない、お化のような囁をいたすのが、
おお方蝙蝠の鳴くように
ぴいぴいと聞えることでしょう。
先導の女
名を揚げたでもなく、優れた事を企てるでもないものは、
四大に帰る外はない。さあ、おいで。
わたしは是非お后様のお側へ行きたい。
人格には功ばかりでは足りない。忠実がなくては。
一同
まあ、これで
もう人と云う資格はなくなったのが、
自分にも分かるようです。
だが決して地獄へは帰りますまいね。
永遠に活動している自然は、
わたし達、霊共に信頼していますから、
こちらも自然にすっかり信頼していて
合唱の群の一部
わたし達は、この百千の枝の囁く
笑談にくすぐり、そっとおびいて、生の泉を根から梢へ上げさせましょう。
たっぷり葉を著けたり、花を咲かせたりして、
あの乱髪をふわふわと自由に栄えるように飾って遣りましょう。
急いで集まって来て、取って食べようとしますでしょう。
そして皆が一番古い神様達の前へ出たように、わたし達の
他の一部
わたし達はやさしい波のように体をゆすって、機嫌を取って、
この
鳥の啼声でも、葦の笛の音でも、よしやパンの神の恐ろしい声であろうとも、どんな声にも
耳を傾けて聞いていて、すぐに返事をして遣りましょう。
ざわつきの返事なら、ざわつきでしましょう。
第三部
きょうだい達。気の軽いわたし達は小川と一しょに急ぎましょう。
あの遠い所の美しく草木の茂っている丘が
それから次第に流れ落ちて、マイアンドロスのようにうねって、
先ず
あそこに平地や、岸や、水を越して、すらりと空を
糸杉の頂が
第四部
お前さん達はどこへでも勝手に飛んでおいで。わたし達は、棚に葡萄の茂っている、
あの一面に畑にしてある岡を取り巻いて、
あそこでは朝も晩も、葡萄
鋤鍬で掘ったり、根に土を盛ったり、摘んだり、縛ったりして、
あらゆる神様達を、中にも日の神様を祈っています。
意気地なしのバクホス様は忠義な
小屋に寝たり、洞の中で物にもたれて、一番若いファウニと無駄話をしたりしています。
あの神様の夢見心の
遠い世の後まで、冷たい穴蔵の右左に並べてある
しかしあらゆる神様達、中にも日の神様が、風を通し、
濡らし、温め、日に
葡萄
幹から幹へと騒ぎが移って行きます。
籠がみしみし、小桶がことこと、
大桶まで漕ぎ附けます、
そこで浄く生れた、露たっぷりな葡萄の房の神聖な豊けさが、
不作法に踏まれ、醜く潰されて、泡を立て、とばしりを跳ねさせて交り合います。
そこで
これはジオニゾスの神様が
山羊の脚の男神様が、山羊の脚の女神達と踊って出て来る、その間に
セイレノスを載せた、耳の長い
何一ついたわりません。割れた蹄が
酔っぱらいが杯を捜します。頭も腹も溢れます。
誰やらあちこちにまだ世話を焼いてはいますが、それは騒ぎを大きくするばかりです。
無理はありません。新しい
(幕下る。)
闇の女フォルキアス舞台の前端にて、巨人の如き姿をなして立ち上がり、