つみびとの歌 阿部六郎に
わが生は、下手な植木師らに あまりに夙(はや)く、手を入れられた悲しさよ! 由来わが血の大方は 頭にのぼり、煮え返り、滾(たぎ)り泡だつ。 おちつきがなく、あせり心地に、 つねに外界に索(もと)めんとする。 その行ひは愚かで、 その考へは分ち難い。 かくてこのあはれなる木は、 粗硬な樹皮を、空と風とに、 心はたえず、追惜のおもひに沈み、 懶懦(らんだ)にして、とぎれとぎれの仕草をもち、 人にむかつては心弱く、諂(へつら)ひがちに、かくて われにもない、愚事のかぎりを仕出来(しでか)してしまふ。