第十六曲
我は既に次の
この時
我等の方にむかひて來り、各叫びていひけるは、止まれ、衣によりてはかるに汝は我等の
あはれ彼等の身にみゆるは何等の傷ぞや、みな焔に燒かれしものにて新しきあり、古きあり、そのさま出づればいまなほ苦し
我師彼等のよばゝる聲に心をとめ顏をわが方にむけていひけるは、待て、彼等は人の敬ひをうくべきものなり
さればもし處の
我等止まれるに彼等は再び古歌をうたひ、斯くて我等に近づける時
裸なる身に
彼等もまためぐりつゝ各目を我にそゝぎ、頸はたえず足と異なる方にむかひて動けり
そのひとりいふ、この軟かき處の幸なさ、
願はくは我等の名汝の
見らるゝ如く足跡を我に踏ましむるこのひとりは裸にて毛なしといへども汝の思ふよりは尚
こは善きグアルドラーダの孫にて名をグイード・グエルラといひ、その世にあるや智と劒をもて多くの事をなしたりき
わが
また彼等と共に十字架にかゝれる我はヤーコポ・ルスティクッチといへり、げに
我若し火を避くるをえたりしならんには身を彼等の中に投げ入れしなるべく思ふに師もこれを許せるなるべし
されど焦され燒かるべき身なりしをもて、彼等を抱かんことを
かくて我曰ひけるは、汝等の
こはこれなる我主の
我は汝等の
我は
この時彼答ふらく、ねがはくは魂ながく汝の身をみちびき汝の名汝の後に輝かんことを
請ふ告げよ、文と武とは昔の如く我等の
そはグイリエールモ・ボルシエーレとて我等と共に苦しむ日淺くいまかなたに侶とゆく者その
われ顏を擧げて斯くよばゝれるに、かの
皆答へて曰ひけるは、かく卑しき價をもていづれの日にかまた人の心をたらはすをえば、かく心のまゝに物言ふ汝は
此故に汝これらの暗き處を脱れ、再び美しき星を見んとて歸り、我かしこにありきと喜びていふをうる時
ねがはくは我等の事を人々に傳へよ、かくいひてのち輪をくづしてはせゆきぬ、その足
彼等は忽ち見えずなりにき、アーメンもかくはやくは唱へえざりしなるべし、されば師もまた去るをよしと見たまへり
我彼に從ひて少しく進みゆきたるに、この時水音いと近く、たとひ我等語るとも聲聞ゆべくはあらざりき
モンテ・ヴェーゾの東にあたりアペンニノの左の裾より始めて己の路をわしり
その高處にありて未だ低地にくだらざる間アクアケータと呼ばれ、フォルリにいたればこの名を空しうする川の
たゞ
かの紅の水はほどなく耳をいたむるばかりに鳴渡りつゝ一の嶮しき岸をくだれり
我は身に一筋の紐を卷きゐたり、嘗てこれをもて皮に色ある豹をとらへんと思ひしことありき
われ導者の命に從ひてこと/″\くこれを解き、結び
彼乃ち右にむかひ、少しく
我謂へらく、師斯く目を添へたまふ世の常ならぬ相圖には、應ふるものもまた必ず世の常ならぬものならむと
あゝたゞ行ひを見るのみならで、その智よく
彼我に曰ふ、わが待つものたゞちに
夫れ
されど我今默し難し、讀者よ、この
我は濃き暗き空氣の中にいかなる堅き心にもあやしとなすべき一の
そのさまたとへば岩または海にかくるゝほかの物よりこれを攫める錨を拔かんとをりふしくだりゆく人の
身を上にひらき足は