第三十一曲
同じ一の舌なれども先には我を刺して左右の頬を染め、後には藥を我にえさせき
聞くならくアキルレとその父の槍もまたかくのごとく始めは悲しみ後は幸ひを人に與ふる習ひなりきと
我等は背を
さてこの
われ
彼我に、汝はるかに暗闇の中をうかゞふがゆゑに量ることたゞしからざるにいたる
ひとたびかしこにいたらば遠き處にありては官能のいかに欺かれ易きものなるやをさだかに知るをえん、されば少しく足をはやめよ
かくてやさしく我手をとりていひけるは、我等かなたにゆかざるうち、この事汝にいとあやしとおもはれざるため
しるべし、彼等は巨人にして櫓にあらず、またその
水氣空に
我次第に
あたかもモンテレッジオンが圓き
その半身をもて坎をかこめる岸を卷けり(ジョーヴェはいまも
我は既にそのひとりの顏、肩、胸および腹のおほくと腋を下れる
げに自然がかゝる生物を造るをやめてかゝる
また彼象と鯨を造れるを悔いざれども、見ることさとき人はこれに依りて彼をいよいよ正しくいよ/\
そは心の固めもし惡意と
顏は長く大きくしてローマなる聖ピエートロの
されば下半身の
誇りえざりしなるべし、人の
ラフェル・マイ・アメク・ツアビ・アルミ、猛き口はかく叫べり、(これよりうるはしき聖歌はこの口にふさはしからず)
彼にむかひてわが導者、愚なる魂よ、怒り生じ雜念起らばその角笛に縋りて之をこころやりとせよ
あわたゞしき魂よ、頸をさぐりてつなげる紐をえ、また笛のその大いなる胸にまつはるをみよ
かくてまた我に曰ひけるは、彼己が罪を陳ぶ、こはネムブロットなり、世に一の
我等彼を殘して去り、彼と語るをやめん、これ益なきわざなればなり、人その
かくて左にむかひて我等遠くすゝみゆき
この鏈頸より下をめぐりてその身のあらはれしところを
わが導者曰ふ、この
彼名をフィアルテといふ、巨人等が神々の恐るゝところとなりし頃大いなる
我彼に、若しかなはゞ願はくは量り知りがたきブリアレオのわが目に觸れなんことを
彼すなはち答へて曰ふ、汝はこゝより近き處にアンテオを見ん、彼語るをえて身に
汝の見んとおもふ者は遠くかなたにありてかくの如く繋がれ形亦同じ、たゞその姿いよ/\猛きのみ
フィアルテ忽ち身を
此時我は常にまさりて死を恐れぬ、また若し
我等すゝみてアンテオに近づけり、彼は
あゝアンニバールがその士卒と共に
そのかみ千匹の獅子の
いまも思ふものあるに似たり)、願はくは我等を寒さコチートを閉すところにおくれ、これをいとひて
我等をティチオにもティフォにも行かしむる勿れ、この者よく汝等のこゝに求むるものを與ふるをうるがゆゑに身を
彼はこの後汝の名を世に新にするをうるなり、彼は生く、また時未だ至らざるうち
師かく曰へり、彼速かに嘗てエルクレにその
ヴィルジリオはおのが取られしをしりて我にむかひ、こゝに
傾ける
われ心をとめてアンテオの屈むをみしにそのさままた斯くの如くなりき、さればほかの路を行かんとの願ひもげにこれ時に起れるなるを
彼は我等をかるやかにジユダと共にルチーフェロを呑める底におき、またかくかゞみて時ふることなく
船の檣の如く身を上げぬ