第五曲
斯く我は第一の
こゝにミノス恐ろしきさまにて立ち、齒をかみあはせ、入る者あれば
すなはち
地獄の
彼の前には常に多くの者の立つあり、かはる/″\出でゝ審判をうけ、陳べ、聞きて後下に投げらる
ミノス我を見し時、かく重き
汝みだりに入るなかれ、身を何者に委ぬるや思ひ見よ、入口ひろきによりて欺かるるなかれ、わが導者彼に、汝何ぞまた叫ぶや
彼定命に從ひてゆく、之を妨ぐる勿れ、思ひ定めたる事を凡て行ふ
わがいたれる處には一切の光
かれら荒ぶる勢ひにあたれば、そこに叫びあり、憂ひあり、歎きあり、また神の
我はさとりぬ、かゝる苛責の罰をうくるは、理性を慾の
たとへば寒き時
こゝまたかしこ下また上に吹送り、身をやすめまたは痛みをかろむべき望みのその心を慰むることたえてなし
またたとへば
かの
この時彼我にいふ、汝が知るをねがふこれらの者のうち
かれ淫慾の非に耽り、おのが招ける汚辱を免かれんため
かれはセミラミスなり、書にかれニーノの後を承く、即ちその妻なる者なりきといへるは是なり、かれはソルダンの治むる地をその領とせり
次は戀のために身を殺しシケーオの灰にむかひてその操を破れるもの、次は淫婦クレオパトラースなり
エレーナを見よ、長き禍ひの時めぐり來れるもかれのためなりき、また戀と戰ひて身ををへし大いなるアキルレを見よ
見よパリスを、トリスターノを、かくいひてかれ千餘の魂の戀にわが世を逐はれし者を我にみせ、指さして名を告げぬ
わが師かく古の淑女騎士の名を告ぐるをきける時、我は憐みにとらはれ、わが
我曰ふ、詩人よ、願はくはわれかのふたりに物言はん、彼等相連れてゆき、いと輕く風に乘るに似たり
かれ我に、かれらのなほ我等に近づく時をみさだめ、彼等を導く戀によりて請ふべし、さらば來らむ
風彼等をこなたに靡かしゝとき、われはたゞちに聲をいだして、あはれなやめる魂等よ、彼もし拒まずば來りて我等に物言へといふ
たとへば鳩の、願ひに
あゝやさしく心あたゝかく、世を紅に染めし我等をもかへりみ、
汝我等の大いなる禍ひをあはれむにより、宇宙の王若し友ならば、汝のためにわれら平和をいのらんものを
すべて汝が聞きまたかたらんとおもふことは我等汝等にきゝまた語らむ、風かく我等のために
わが生れし
いちはやく
戀しき人に戀せしめではやまざる戀は、彼の慕はしきによりていと強く我をとらへき、されば見給ふ如く今猶我を棄つることなし
戀は我等を一の死にみちびきぬ、我等の
苦しめる魂等のかくかたるをきゝし時、我はたゞちに顏をたれ、ながく擧ぐるをえざりしかば詩人われに何を思ふやといふ
答ふるにおよびて我曰ひけるは、あはれ
かくてまた身をめぐらしてかれらにむかひ、語りて曰ひけるは、フランチェスカよ、我は汝の苛責を悲しみかつ憐みて泣くにいたれり
されど我に告げよ、うれしき
かれ我に、
されど汝かくふかく戀の
われら一日こゝろやりとて戀にとらはれしランチャロットの物語を讀みぬ、ほかに人なくまたおそるゝこともなかりき
かの
うちふるひつゝわが口にくちづけしぬ、ガレオットなりけり
死體の倒るゝごとくたふれき