第六曲
所縁の兩者をあはれみ、心悲しみによりていたくみだれ、そのため
我わがあたりをみれば、わが動く處、わが向ふ處、わが
我は第三の
猛き異樣の獸チェルベロこゝに浸れる民にむかひ、その
これに紅の眼、脂ぎりて黒き髯、大いなる腹、爪ある手あり、このもの魂等を爬き、噛み、また裂きて
雨はかれらを犬のごとくさけばしむ、かれら
大いなる蟲チェルベロ我等を見し時、口をひらき牙をいだしぬ、その
わが導者
鳴いてしきりに物乞ふ犬も、その
さけびて魂等を驚かし、かれらに
我等ははげしき雨にうちふせらるゝ魂をわたりゆき、
かれらはすべて地に臥しゐたるに、こゝにひとり我等がその前を過ぐるをみ、
この者我にいひけるは、導かれてこの地獄を過行くものよ、もしかなはゞわが誰なるを思ひ出でよ、わが毀たれぬさきに汝は造られき
我これに、汝のうくる苦しみは汝をわが記憶より奪へるか、われいまだ汝を見しことなきに似たり
彼我に、嫉み盈ち/\てすでに
汝等
また悲しき魂の我ひとりこゝにあるにあらず、これらのものみな同じ咎によりて同じ罰をうく、かくいひてまた
われ答へて彼に曰けるは、チヤッコよ、汝の苦しみはわが心をいたましめわが涙を
かれ我に、長き爭ひの後彼等は血を見ん、
かくて
ながくその額を高うし、歎き、憤りいかに大いなりとも敵を重き重荷の下に置くべし
義者
かくいひてかれその斷腸の聲をとゞめぬ、我彼に、願はくはさらに我に教へ、わがために
世に秀でしファーリナータ、テッギアイオ、またヤーコポ・ルスティクッチ、アルリーゴ、モスカそのほか善を行ふ事にその才をむけし者
何處にありや、我に告げ我に彼等をしらしめよ、これ大いなる願ひ我を促し、天彼等を甘くするや地獄彼等を毒するやを知るを求めしむればなり
彼、彼等は我等より黒き魂の中にあり、異なる罪その重さによりて彼等を
されど麗しき世にいづる時、ねがはくは汝我を人の記憶に薦めよ、われさらに汝に告げず、またさらに汝に答へず
かくてかれその
導者我に曰ふ、天使の
かれら皆悲しき墓にたちかへり、ふたゝびその肉その形をとりてとこしへに鳴渡るものをきくべし
少しく
我すなはちいふ、師よ、かゝる苛責の苦しみは大いなる
彼我に汝の教にかへるべし、曰く、物いよ/\全きに從ひ、幸を感ずるいよ/\深し、苦しみを感ずるまた然りと
たとひこの詛ひの民
我等迂囘してこの路をゆき、こゝにのべざる多くの事をかたりつゝ降るべき處にいたり
こゝに大敵プルートを見き