第八曲
續いて語るらく、高き
これ
こゝにわれ全智の海にむかひ、いひけるは、この火何といひ、かの火何と答ふるや、またこれをつくれるものは誰なりや
彼我に、既に汝は來らんとすることを
矢の
舟は水を渡りて、我等のかたにすゝめり、これを
わが主曰ひけるは、フレジアス、フレジアス、こたびは汝さけぶも益なし、我等汝に身を委ぬるは、
怒りを湛へしフレジアスのさま、さながら大いなる
わが導者船にくだり、
導者も我も乘り終れば、年へし
我等死の溝を馳せし間に、泥を被れるもの一人わが前に出でゝいひけるは、時いたらざるに來れる汝は誰ぞ
我彼に、われ來れども止まらず、
我彼に、
この時彼船にむかひて
かくてその
かれは世に僭越なりしものにてその記憶を飾る徳なきがゆゑに魂ここにありてなほ猛し
それ地上現に大王の
我、師よ、我等池をいでざる間に、願はくはわれ彼がこの
彼我に、岸汝に見えざるさきにこの事あるべし、かゝる願ひの汝を喜ばすはこれ適はしきことなればなり
この後ほどなく我は彼が
衆皆叫びてフィリッポ・アルゼンティをといへり、怒れるフィレンツェの魂は齒にておのれを噛めり
こゝにて我等彼を離れぬ、われまた彼の事を語らじ、されど此時
善き師曰ひけるは、子よ、ディーテと稱ふる
我、師よ、我は既にかなたの溪間に火の中より出でたる如く赤き伽藍をさだかにみとむ
彼我に曰ふ、内に燃ゆる
我等はつひこの慰めなき
めぐり/\てやうやく一の處にいたれば、
我見しに天より
死せる民の王土を過ぐる者は誰ぞや、
かれら少しくその激しき怒りをおさへ、いひけるは、汝ひとり來り、かく
狂へる路によりて彼ひとりかへり、しかなしうべきや否やを見しめ、かくこの暗き國をかれに示せる汝はこゝに殘るべし
讀者よ、この詛ひの言をきゝて再び世にかへりうべしと信ぜざりし時、わが心挫けざりしや否やをおもへ
我曰ふ、あゝ
かくよるべなき我を棄てたまふなかれ、もしなほさきに行くあたはずは、我等
我をかしこに導ける主曰ひけるは、恐るゝなかれ、何者といへども我等の
さればこゝにて我を待ち、よわれる
かくてやさしき父は我をこの處に置きて去り、我は疑ひのうちに殘れり、然と否とはわが
彼何をかれらにいへるや、我は聞くをえざりき、されど彼かれらとあひてほどなきに、かれ等みな競ひて内にはせいりぬ
我等の敵は門をわが主の前に閉せり、主は
目は地にむかひ、眉に信念の跡をとゞめず、たゞ歎きて憂ひの家を我に拒めるは誰ぞといふ
また我にいひけるは、わが怒るによりて汝恐るゝなかれ、いかなる者共内にゐて防ぎ止めんとつとむとも、我はこの爭ひにかつべし
彼等の非禮を行ふは新しきことにあらず、かく祕めらるゝことなく今も
汝がかの死の銘をみしは即ちこの門の上なりき、いまそのこなたに導者なく圈また圈を過ぎて坂を降るひとりのものあり
かれよくこの邑を我等のためにひらくべし