太陽を呑む赤い老星の秘密
著者:畑中 武夫 読み手:菅野 秀之 時間:10分42秒
そろそろ夏が来る。
夏の空の星で、ぼくが一番なつかしいのは、さそり座とその主星アンタレスである。
中学初年のころ、﹁子供の科学﹂や﹁科学画報﹂の星座案内をたよりに、熊野川の川口近くの河原に立ってこの星座をながめた。
アンタレスは赤い星である。アンタレスの名は、﹁火星の敵﹂という意味だそうである。赤い星、火星に対抗するほど赤味をおびた、そして明るい星ということであろう。
アンタレスはさそりの心臓である。向って右、つまり西の方に巨大なさそりの爪がある。アンタレスから左下にならぶ星は、ゆるい曲線でSの字の下半分を書いて、いかにもさそりの尾を想わせる・・・