もぐらとコスモス
著者:原 民喜 読み手:堀口 直子 時間:4分1秒
コスモスの花が咲き乱れていました。赤、白、深紅、白、赤、桃色……花は明るい光に揺らいで、にぎやかに歌でも歌っているようです。
暗い土の底で、もぐらの子供がもぐらのお母さんに今こんなことを話していました。
﹁僕、土の上へ出てみたいなあ、ちょっと出てみてはいけないかしら﹂
﹁駄目、私たちのからだは太陽の光を見たら一ぺんに駄目になってしまいます。私たちの眼は生れつき細く弱くできているのです﹂
﹁でも、この暗い土の底では、何にも面白いことなんかないもの。それなのに、ほら、このコスモスの白い細い根っこが、何かしきりに近頃たのしそうにしているのは、きっと何か上の方で、それはすばらしいことがあるのだろうと僕思うのだがなあ﹂・・・