玉虫のおばさん
著者:小川 未明 読み手:緒方 朋恵 時間:9分48秒
ある日、春子さんが、久代さんの家へ遊びにまいりますと、
﹁ねえ、春子さん、きれいなものを見せてあげましょうか。﹂と、いって、久代さんは、ひきだしの中から、小さなきりの箱を取り出しました。
﹁この中に、なにが入っているか、あててごらんなさい。﹂と、笑いながら、いいました。
春子さんは、なんだろうと思いました。いくら頭をかしげてもわかりません。
﹁わからないわ。﹂
﹁きれいなものよ。﹂と、久代さんは、にっこりしました。
﹁指輪でしょう。﹂と、春子さんは、答えました。
﹁いいえ、そんなものでないの。﹂
﹁じゃ、なんでしょう。宝石?﹂
﹁宝石より、もっときれいなものよ。﹂・・・