ある夏の日のこと
著者:小川 未明 読み手:かわなみ のりこ 時間:5分53秒
姉さんは、庭前のつつじの枝に、はちの巣を見つけました。
﹁まあ、こんなところへ巣を造って、あぶないから落としてしまおうか。﹂と、ほうきを持った手を抑えてためらいましたが、
﹁さわらなければ、なんにもしないでしょう。﹂
せっかく造りかけた巣をこわすのもかわいそうだと考え直して、しばらく立ち止まって、一ぴきの親ばちが、わき見もせず、熱心に小さな口で、だんだんと大きくしようと、固めていくのをながめていました。そのうちに、はちはどこへか飛び去りました。なにか材料を探しにいったのでしょう、しばらくすると、またもどってきました。そして、同じようなことをうまずに繰り返していました。
﹁このはち一ぴきだけだろうか。﹂
彼女は、同じ一ぴきのはちが、往ったり返ったりして、働いているのしか見なかったからです・・・