キャラメルと飴玉
著者:夢野 久作 読み手:池戸 美香 時間:3分21秒
キャラメルと飴玉とがお菓子箱のうちで喧嘩をはじめました。
﹁ヤイ、飴玉の間抜け野郎。貴様はまん丸くて甘ったるいばかりで何にもならないじゃないか。俺なんぞ見ろ。ちゃんと着物を着て四角いおうちにはいっているんだぞ。貴様なんぞは着物なんか欲しくたって持たないだろう。態をみろヤーイ﹂
飴玉は真赤になって憤り出しました。
﹁失敬なことを言うな。うちにいる時は裸だけど、外に出る時にゃちゃんと三角の紙の着物を着て行くんだ。第一貴様の名前が生意気だ。キャラメルなんて高慢チキな面をしやがって、日本にいるのならもっと日本らしい名前をつけろ﹂
﹁こん畜生、横着な事を言う。キャラメルが悪けりゃあカステイラは西班牙の言葉だぞ。シュークリームでもワッフルでも良いが、菓子にはみんな西洋の名前が付いているんだ・・・