水草
著者:久生 十蘭 読み手:金勝 陽子 時間:5分10秒
朝の十時ごろ、俳友の国手石亭が葱とビールをさげてやってきた。
﹁へんな顔をしていますね。どうしました﹂
﹁田阪で池の水を落とすのが耳について眠れない。もう三晩になる﹂
﹁あれにはわたしもやられました。池を乾して畑にするんだそうです﹂
﹁それはいいが、そのビールはなんだね﹂
﹁あい鴨で一杯やろうというのです。尤もあひるはこれからひねりに行くのですが﹂
田阪のあひるが水門をぬけてきて畑を荒してしようがないから、おびきだしてひねってしまうというはなしなのである・・・