武ちゃんと昔話
著者:小川 未明 読み手:田中 淑恵 時間:8分4秒
この夏休みに、武ちゃんが、叔父さんの村へいったときのことであります。
ある日、村はずれまで散歩すると、そこに大きな屋敷があって、お城かなどのように、土塀がめぐらしてありました。そして、雨風にさらされて古くなった門が、しめきったままになって、内には、人が住んでいるとは思われませんでした。
﹁どうしたんだろうか。﹂と、武ちゃんは、不思議に思いました。門のすきまからのぞくと、家のほかに土蔵もあったけれど、ところどころ壁板がはずれて、修繕するでもなく、竹林の下には、枯れ葉がうずたかくなって、掃くものもないとみえました。あたりは、しんとして、ただすずめの鳴き声が、きこえるばかりです。
﹁この家の人は、どこへいったんだろう?﹂
武ちゃんは、家へ帰ると、さっそくそのことを叔父さんにたずねたのであります・・・