正夢
著者:夢野 久作 読み手:池戸 美香 時間:7分7秒
昔、ある街の町外れで大勢の乞食が集まって日なたぼっこしながら話しをしておりましたが、その中で一人の若い乞食が大きな声を出して申しました。
﹁おい、皆聞け。俺が昨夜他家の軒下で寝ていると、白い着物を着た人が来て、俺について来いと云った。おれは何でもこれは福の神に違いないと思って従いて行って見ると、この街の真中の四辻に来て神様は、地面の上を指してそのまま消えてしまった。見るとそこには金剛石を鏤めた金の指環が……﹂
とまだ話してしまわない中に、横に居った跛の乞食が、持っていた松葉杖で、若い男の頭をコツンと打ちますと、若い男はウーンと云って引っくりかえりました・・・