アパートで聞いた話
著者:小川 未明 読み手:きにぃ 時間:11分4秒
そのおじさんは、いつも考えこんでいるような、やさしい人でした。少年は、その人のへやへいきました。
﹁なにか、お話をしてくださいませんか。﹂と、たのみました。
﹁どんな話かね。﹂と、おじさんは、聞きました。
﹁どんな話でもいいのです。﹂と、少年がいうと、おじさんは、つぎのような話をしてくれたのです。
二、三日まえの新聞にあったが、街の中央へビルディングができるので、地を深くほりさげていると、動物の骨が出てきた。それを学者がしらべて、およそ二万年も前の人間の骨で、まだ若い二十歳前後の女らしいが、たぶん波にただよって、岸に死体がついたものだろう・・・