チューリップの芽
著者:小川 未明 読み手:渡邊 明美 時間:2分37秒
チューリップは、土の中で、お母さんから、世の中に出てからの、いろいろのおもしろい話をきいて、早く芽を出したいものと思っていました。
﹁ちょうちょうは、どんなに、美しいの?﹂と、お母さんにたずねたりしました。
﹁そんなに、いそいではいけません。いい時分になったら、お母さんがいってあげます。それまでは、おとなしくして、待っておいでなさい。﹂と、お母さんは、さとされました。
けれど、今年出るチューリップは、がまんしていることができませんでした。
﹁お母さん、もう、芽を出してもいいでしょう。﹂といいました。
﹁いいえ、まだ、いけません。﹂と、お母さんは許されなかったのです。
けれど、とうとうチューリップは、がまんができなくなって、銀色のかわいらしい芽を土の上へ出しました・・・