気のいい火山弾
著者:宮沢 賢治 読み手:つかさ 時間:15分8秒
ある死火山のすそ野のかしわの木のかげに、﹁ベゴ﹂というあだ名の大きな黒い石が、永いことじぃっと座っていました。
﹁ベゴ﹂と云う名は、その辺の草の中にあちこち散らばった、稜のあるあまり大きくない黒い石どもが、つけたのでした。ほかに、立派な、本とうの名前もあったのでしたが、﹁ベゴ﹂石もそれを知りませんでした。
ベゴ石は、稜がなくて、丁度卵の両はじを、少しひらたくのばしたような形でした。そして、ななめに二本の石の帯のようなものが、からだを巻いてありました。非常に、たちがよくて、一ぺんも怒ったことがないのでした・・・