青い草
著者:小川 未明 読み手:まあき、マナミン、ジョン酒巻 時間:11分9秒
小さな姉弟は、父の目が、だんだん見えなくなるのを心配しました。
﹁お父さん、あのカレンダーの字が、わからないの?﹂と、壁の方を指していったのは、もう前のことであります。お父さんが、会社をやめてから、家の内にも夜がきたように暗くなったのです。
﹁私の故郷へ帰りましょう。田舎は、都会とちがって、困るといっても、田はあるし、畑があるし、まだゆとりがあります。いけば、どうにかならないこともありますまいから。﹂と、子供の母親がいいました。
﹁お母さん、田舎へ帰るの。﹂と、姉のとし子は、お母さんの体へすがりながらききました。
﹁ええ、帰りましょうね、そうするよりしかたがないんですもの。﹂
お母さんは、みんなの気持ちを励ますつもりで、いいましたが、また、すぐに涙ぐんでしまいました・・・