未来を築く力
著者:宮本 百合子 読み手:藤崎 巧子 時間:3分5秒
女のひとというものは道理がわからないものだ、そう思われるのが常識であった時代はすぎた。夏目漱石が﹁吾輩は猫である﹂のなかで、婦人の精神の低劣さを諷刺した文章は、今日、もう日本の女性のおろかしさを語るものではなくなった。却って、漱石ほどの作家でさえも明治四十年代の日本の社会では、婦人についてこういう見解を語ったのだから、日本の封建的な習慣というものはひどいものであったと、凡ての人に考えさせる資料となった。
道理もわかり、その方法も可能性として婦人の生活に芽生えているのに、まだ何か、婦人の日々のうちには湧き立つ美しくつよい力が不足している・・・