ひのきとひなげし
著者:宮沢 賢治 読み手:佐久間 史江 時間:20分7秒
ひなげしはみんなまっ赤に燃えあがり、めいめい風にぐらぐらゆれて、息もつけないようでした。そのひなげしのうしろの方で、やっぱり風に髪もからだも、いちめんもまれて立ちながら若いひのきが云いました。
﹁おまえたちはみんなまっ赤な帆船でね、いまがあらしのとこなんだ﹂
﹁いやあだ、あたしら、そんな帆船やなんかじゃないわ。せだけ高くてばかあなひのき。﹂ひなげしどもは、みんないっしょに云いました。
﹁そして向うに居るのはな、もうみがきたて燃えたての銅づくりのいきものなんだ。﹂・・・