青い星の国へ
著者:小川 未明 読み手:土居 愛子 時間:15分47秒
デパートの内部は、いつも春のようでした。そこには、いろいろの香りがあり、いい音色がきかれ、そして、らんの花など咲いていたからです。
いつも快活で、そして、また独りぼっちに自分を感じた年子は、しばらく、柔らかな腰掛けにからだを投げて、うっとりと、波立ちかがやきつつある光景に見とれて、夢心地でいました。
﹁このはなやかさが、いつまでつづくであろう。もう、あと二時間、三時間たてば、ここにいる人々は、みんなどこかにか去って、しんとして暗くさびしくなってしまうのだろう。﹂
こんな空想が、ふと頭の中に、一片の雲のごとく浮かぶと、急にいたたまらないようにさびしくなりました・・・