のら犬
著者:新美 南吉 読み手:つかさ 時間:13分13秒
一
常念御坊は、碁がなによりもすきでした。きょうも、となり村の檀家へ法事でよばれてきて、お昼すぎから碁をうちつづけ、日がかげってきたので、びっくりしてこしをあげました。
﹁まあ、いいじゃありませんか。これからでは、とちゅうで夜になってしまいます。今夜は、とまっていらっしゃいましよ。﹂
と、ひきとめられました。
﹁でも、小僧がひとりで、さびしがりますから。さいわいに風もございませんので。﹂
と、おまんじゅうのつつみをもらって、かえっていきました。
常念御坊は歩きながらも、碁のことばかり、考えつづけていました。さっきのいちばんしまいの、あすこのあの手はまずかった・・・