柿
著者:土田 耕平 読み手:川村 ゆかり 時間:5分54秒
私の村は﹁柿の木の村﹂でした。家といふ家のまはりには、大きな小さな柿の木が、立ち並んでゐました。
夏は、村ぢゆうが深い青葉につゝまれ、秋はあざやかな紅葉に染りました。紅葉がちつてうつくしく色づいた実が、玉をつづつてゐるのを見るのは、どんなにたのしかつたでせう。
私の家の庭には、大きな柿の木が幾本もありましたので、家内だけで食べつくすわけにはいきません。山浦のお百姓さんが、稲のとりいれがすんだ時分に、馬をひいて、買ひにきました。
﹁こんちは、今年もきたぜ。﹂
山浦のお百姓さんは、ふとい声で、あいさつして、庭の柴戸口から入つてきました。
﹁どう〳〵。﹂・・・